AI需要予測とは?飲食・製造業など各業界の成功事例12選!
BtoC、BtoB問わず企業のAI活用が盛んになり始めた今日この頃ですが、中でも一際責任者たちの目をふくAI分野があります。
それは「AI需要予測」です。読んで字の如く、AIが人間の代わりに“需要≒売れ筋”を予測してくれるのですから、魅力的な文字に見えるかと思います。
しかし、実際にはどのような形でAI需要予測が活用されていて、また成功事例はどのようなものかを詳しく知る方は多くない印象を受けます。
そこで本記事では、AI需要予測について概論を展開し、各業界で成功を収めた事例12選を紹介します。AI需要予測の活用方法とその効果を包括的に理解するための内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ださい。
AI需要予測とは
AI需要予測とは、端的に言えば人工知能技術を用いて将来の需要を分析・予測する方法です。大量のデータを基にAIモデルを開発し、精度の高い予測を実現し、ビジネス戦略の最適化に貢献してくれます。
本節ではそんなAI需要予測について簡単に概要を解説いたします。
人間の需要予測との違い
そもそもAIが行う需要予測と人間が行うような分析(「この市場でこの商品が売れそうだな」などの予測)とは何が違うのでしょうか?
結論から言えば、AI需要予測は“人間の無駄な雑念”・“人間の認知バイアス”から逸脱した予測をできる可能性が高いという点にあります。
また、AIモデルは計算処理を超高速で行うため、人間よりも圧倒的に速いスピードでの正確なデータ分析が可能です。つまり、高精度かつ客観的な予測が可能となり、事業者から見ればメリットを享受できるチャンスが増えると言うことになります。
正確に言えばAIモデルも人間で言うところの認知バイアス的な振る舞いを見せることもありますが、それは開発段階のチューニングで如何様にも改善することが可能です。
AI需要予測のできること
AI需要予測は、
- 過去の販売実績
- 季節変動
- マーケットトレンド
- 消費者行動
など多岐にわたる要素を統合し、精緻な予測モデルを構築します。
需要のピーク時期や減少傾向を事前に予測することができるため、適切な在庫管理や生産計画の策定が可能となるのです。
また、マーケットは常に動くものですので、リアルタイムでのデータ更新を活用することで、市場の急激な変化にも迅速に対応でき、ビジネスの柔軟性と効率性を高めることもできます。
もちろん、最終的な判断を下すのは責任者たる人間が行うのですが、その下流工程にあたる分析行為に関してはAI需要予測によって正確かつ素早い意思決定が可能になるでしょう。
AI需要予測のメリット
事例をご紹介する前に、AI需要予測を導入・開発することによるメリットを整理しておきましょう。
何をするにしてもメリットがどこに発生するかを把握しておくことは重要です。
以下にAI需要予測によってもたらされるメリットを3点ご紹介します。
マーケットイン・プロダクトアウト最適化
まず、需要予測が容易かつ精巧になると言うことは、つまりはマーケットイン・プロダクトアウトの精度も上がると言うことになります。
マーケットインのアプローチでは、消費者の購買行動やトレンドを把握し、需要を正確に予測することが求められます。適切な商品開発やプロモーション戦略を策定します。
一方、プロダクトアウトでは自社の技術力や製品を基に市場投入のタイミングや供給量を最適化することが求められます。
難しく言いましたが、要するに「売れ筋に対して自社が提供するモノ・タイミング・その量を見極める」ことが重要なのです。
これがAI需要予測の導入により、両方のアプローチが統合的に機能するため、企業は市場の変化に迅速かつ柔軟に対応できるようになります。結果として、収益性の最大化が実現されるのです。
予算の最適化
こちらは先ほどのプロダクトアウト最適化と被る部分がありますが、AI需要予測は予算の最適化にも役立ちます。
広告やSEO対策など、マーケティング活動にかかるすべての予算はマーケットニーズから逆算した戦略策定のもと確保されるものです。無駄なコストを削減し、ROI(投資対効果)を最大化することが重要です。
この点において、人間による需要予測は一定の経験則に基づいたセンスが重要であったり、感情や主観に左右されない正確な分析が求められるため、AI需要予測の特徴はこれらを網羅していると言えます。
業務の効率化
また、AI需要予測は業務プロセスの自動化と最適化を実現しうるといっても過言ではありません。
在庫管理、生産スケジューリングなどの業務においてAIがデータを分析すると、ある種の重複作業や工程を人間が負担をせずに済みます。
これにより、ヒューマンエラーの削減が可能となったり、従業員にとってはよりハイバリューな業務に集中することができます。
これはAI需要予測によって直接的にもたらされるメリットではありませんが、AIの導入によって業務が効率化することは間違いなくその企業にとってのメリットになるでしょう。
AI需要予測の成功事例【業界別】
いよいよ、本節でAI需要予測の成功事例についてご紹介していきます。今回は読者の皆さまによって業界が違うことを想定し、業界別に事例を分けてみました。
是非参考にしてみてください。
交通・運輸のAI需要予測事例
JAL(日本航空)
日本航空は2014年に米PROSのO&D Revenue Managementを導入し、国内線・国際線を横断した需要予測と価格最適化基盤を確立しました。予約履歴・イベント・気象・接続旅程など日次で約3,000万件規模のデータを機械学習で解析し、便・座席クラス別に数分単位で需要を再予測します。
2023年以降は羽田・成田の混雑緩和シミュレーションとも連携し、搭乗順序の最適化で地上処理時間を短縮。収益管理指標(RASK)と定時運航率の双方を押し上げ、DX注目企業2025にも選定されました。
活用シーン/仕組み | 主な成果 |
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O&D需要予測+動的プライシング | 座席販売最適化、欠航・オーバーブッキング低減 |
東京無線 × NTTドコモ「AIタクシー」
2020年に実証が始まった AIタクシーは、需要ヒートマップとダイナミック配車アルゴリズムにより乗車率向上を図る取り組みです。2024年時点で約1,500台が導入されています。
空車走行距離短縮や売上向上の詳細数値は公表されていませんが、社内試算では改善傾向が報告されています。
活用シーン/仕組み | 主な成果 |
AI需要予測×配車最適化 | 空車走行距離短縮・売上向上(社内試算) |
ヤマト運輸
ヤマト運輸は宅配量の需要予測とハブ・ラストマイル配送計画を統合するAI-SCMを段階導入中です。
労務負荷や走行距離の削減を目的にPoCを継続しており、定量効果はまだ公開されていません。
活用シーン/仕組み | 主な成果 |
地域別荷物量予測+自動配車 | 労務負荷・走行距離の削減を目的にPoC継続中 |
製造業のAI需要予測事例
コカ・コーラ ボトラーズジャパン
全国約70万台の自動販売機データをGoogle Cloud上のo9 Platformに集約し、補充ルートと在庫を最適化。
補充台数の削減や欠品低減を目指したPoCを実施しており、具体的な数値は社内指標として管理されています。
活用シーン/仕組み | 主な成果 |
需要予測×動的ルート最適化 | 補充台数の削減・欠品低減(具体数値非公開) |
Nestlé(ネスレ)
ネスレはSAP IBPによる需要予測モデルを導入し、在庫計画を自動化。
公開資料で予測誤差30%削減が確認されており、欠品率改善については詳細非公開です。
活用シーン/仕組み | 主な成果 |
AI需要予測×在庫最適化 | 予測誤差30%削減、欠品率改善(定量値非公開) |
ツムラ
ツムラは生薬需要の季節変動をAIで分析し、調達・製造計画に反映するPoCを実施中です。
定量的な効果指標は現時点で公表されていません。
活用シーン/仕組み | 主な成果 |
生薬需要予測×在庫計画 | 在庫適正化を目的に検証中(定量値未公開) |
小売業のAI需要予測事例
ローソン「AI.CO」
AI.COは店舗別の売上・廃棄・気象などを考慮して発注数量を提案するシステム。
既存店粗利を2025年度に70億円増加させる計画です。発注時間削減や食品ロス低減は目標であり、具体的な数値は社内で管理されています。
活用シーン/仕組み | 主な成果 |
需要予測×自動発注 | 発注時間削減・食品ロス低減(具体数値は社内目標) |
セブン‐イレブン
セブン&アイは需要予測AIを活用した発注支援PoCを進めており、発注担当者の業務負荷軽減を目的にテスト運用中です。
効果指標は公表されていません。
活用シーン/仕組み | 主な成果 |
需要予測×発注支援PoC | 発注業務負荷軽減(効果非公開) |
IKEA × Verity ドローン
IKEAは倉庫棚卸し用ドローンを73施設・約250台展開し、在庫確認を自動化。棚卸し時間短縮や棚差発見精度向上が報告されています。
活用シーン/仕組み | 主な成果 |
ドローン棚卸し×需要予測連携 | 棚卸し時間短縮・棚差発見精度向上 |
ユニクロ(ファーストリテイリング)
ユニクロは需要予測エンジンとサプライチェーン計画システムを統合し、SKU増加に対応しつつ在庫回転を維持しています。
詳細な定量効果については2024年アニュアルレポートで報告予定です。
活用シーン/仕組み | 主な成果 |
需要予測×生産・物流計画 | リードタイム短縮・売れ残り削減(定量値非公開) |
サービス業のAI需要予測事例
ソニー損保「GOOD DRIVE」
テレマティクス系アプリGOOD DRIVEから取得する運転データを基にリスクスコアリングを行い、保険料キャッシュバック最大30%を提供。
事故率低減効果を狙っています。
活用シーン/仕組み | 主な成果 |
走行データ予測×リスク評価 | 最大30%割引・事故率低減(事故対応時間定量値非公開) |
ゑびや大食堂/EBILAB
伊勢の老舗食堂がPOS・天候・交通量を基に需要予測し、仕込み量を自動算出。食品ロス70%削減、客単価10%向上を2019年から2023年にかけて達成しています。
活用シーン/仕組み | 主な成果 |
需要予測×仕込み量最適化 | 食品ロス70%削減、客単価10%向上 |
参考: 各数値は公開事例・プレスリリースを基にした概算です。
まとめ
AI需要予測は、各業界において運営効率の向上やコスト削減、顧客満足度の向上に大きく寄与しています。本記事で紹介した事例からも、その有効性が示唆されているかと思います。
今後、AI技術のさらなる進化により、需要予測の精度はますます高まり、多くの企業がビジネスの最適化を図るために導入を進めることが期待されます。
AI需要予測は、競争力を維持・向上させるための不可欠なツールとして、各業界での活用が一層重要となるでしょう。
この記事の著者

児玉慶一
執行役員/ AI・ITエンジニア
愛称: ケーイチ
1999年2月生まれ。大学へ現役進学後数ヶ月で通信キャリアの営業代理店を経験。営業商材をもとに100名規模の学生団体を構築。個人事業主として2018年〜2020年2月まで活動したのち、2020年4月に広告営業事業を営む株式会社TOYを創業。同時期にITの可能性を感じプログラミングを始め、現在はITエンジニアとして活動中。2021年にLeograph株式会社に参画し、AI研究開発やWebアプリ開発などを手掛ける。 「Don't repeat yourself(重複作業をなくそう)」「Garbage in, Garbage out(無意味なデータは、無意味な結果をもたらす)」をモットーにエンジニア業務をこなす。
【得意領域】
業務効率化AIモデル開発
事業課題、戦略工程からシステム開発
Webマーケティング戦略からSaaS開発