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AI開発に強いプログラミング言語とは?主流言語やライブラリも紹介!

昨今の急速なAI関連市場の煽りを受け、「自社内でもAI開発を行いたい」「AI開発に必要な言語を持つエンジニアを採用したい」「そもそもAI開発はどのプログラミング言語を使うのか?」などの思いを持つ事業者様が増えている印象があります。

本記事では、機械学習やAI開発(人工知能開発)で利用される主流のプログラミング言語について、特徴や強みを踏まえてご紹介し、さらにはAI開発を推し進める代表的なライブラリについても解説いたします。

AI開発に適したプログラミング言語の選定基準

AI開発に適したプログラミング言語を選定する際には、複数の重要な基準を慎重に検討することが不可欠です。これらの基準は、プロジェクトの成功や開発効率、最終的な成果物の品質に大きな影響を与えるため、適切な判断が求められます。本節では、特にライブラリの充実度、業界標準であるかどうか、そして処理速度の速さという三つの主要な視点から、最適なプログラミング言語を選定するための基準について詳しく解説します。

ライブラリの充実度

AI開発におけるプログラミング言語の選定において、ライブラリの充実度は極めて重要な要素です。

豊富なライブラリが利用可能であることは、開発工程の効率化や高度な機能の実装に直結します。例えば、機械学習や深層学習、データ処理など、さまざまな用途に対応した専門的なライブラリが揃っている言語は、開発者にとって大きな利点となります。

さらに、ライブラリの更新頻度とメンテナンスの継続性も重要な評価基準となります。頻繁に更新され、最新の技術トレンドに対応しているライブラリは、新機能の迅速な導入を可能にします。

 以上の点を総合的に考慮すると、AI開発に最適なプログラミング言語を選定する際にライブラリの充実度を重要な指標とすることが可能となります。

業界標準であるかどうか

広範な採用実績を持つ言語は、多くの企業やプロジェクトで実際に使用されており、その信頼性と実用性が裏付けられています。新規プロジェクトにおいても既存の知識や経験を活用しやすくなるため、開発効率の向上が期待できます。 

さらに、業界標準の言語は豊富なドキュメントや教育資料が整備されていることが多く、開発者のスキル向上にも役立ちます。詳細なマニュアルやチュートリアルが提供されていることで、新開発がスムーズに進み、チーム全体の生産性が向上します。

業界標準であるかどうかは、AI開発に適したプログラミング言語を選定する際の重要な指標となります。開発者が効果的かつ効率的にプロジェクトを進めるために欠かせない要素です。

処理速度の速さ

処理速度の速さは、AI開発において不可欠な要素と言えます。AIアルゴリズムの実行には、高い処理速度が求められます。

リアルタイムなデータ処理や大規模データセットの取り扱いにおいては、プログラミング言語のパフォーマンスが直接的に開発の成否を左右します。複数の工程を同時に実行し、計算資源を最大限に利用することが欠かせないためです。

結果として、複雑なAIモデルのトレーニング時間が大幅に短縮され、開発効率が向上します。

高速な処理能力を持つ言語を選定することで、モデルの反復的なトレーニング工程が迅速に行われ、開発周期が短縮されます。

AI開発に適したプログラミング言語ランキングTOP10

本ランキングは、AIプロジェクトに最適な言語選定を支援し、開発効率および成果の最大化を図ることにあります。

AI開発においては、使用するプログラミング言語がプロジェクトの成功に大きな影響を与えるため、適切な言語選びが極めて重要です。 

ランキングの選定基準として、ライブラリの充実度、業界標準であるかどうか、処理速度の速さに加え、コミュニティの活発さ、開発者のサポート体制、学習曲線の容易さなどを考慮しました。

以下では、具体的なランキング10選を詳細に解説し、それぞれの言語が持つ独自の利点と活用事例について紹介していきます。

1位: Python

1位に輝くPythonは、AI開発において最も広く利用されているプログラミング言語です。その人気の理由は、豊富なライブラリとフレームワークにあります。特に、TensorFlowやPyTorchといった強力なライブラリは、機械学習や深層学習のモデル構築を効率的に行うための強力なツールを提供しています。また、Pythonのシンプルで直感的な文法は、開発者が複雑なアルゴリズムやデータ処理を容易に実装できる環境を整えています。

Pythonという言語は、初心者から専門家まで幅広い層に受け入れられています。 処理速度においては他の言語と比較するとやや劣る部分もありますが、C++などの他言語との連携や最適化技術の導入により、実用上問題となるケースは少なくなっています。

また、Pythonは多様な用途に適応できる汎用性を持ち、Web開発、データ解析、科学計算など、AI開発以外の分野でも広く活用されています。 

総じて、Pythonはその利便性と拡張性、豊富なリソースによって、AI開発における最適な選択肢として1位と言えるでしょう。

2位: C++


C++は、AIシステムに厳格なリアルタイム性と超高速な推論が求められる場面で真価を発揮する言語です。ハードウェア寄りのメモリ管理と最適化しやすいコンパイルモデルにより、大規模データや高フレームレート処理でも遅延を最小限に抑えられます。代表的なライブラリにはCaffe、TensorFlow C++ API、Eigenなどがあり、数値計算からニューラルネット実装まで幅広くカバー。Pythonバインディングを併用すれば、試作はPythonで、ボトルネックのみC++で高速化するハイブリッド手法も容易です。習得難度とメモリ管理の負荷は高いものの、ピーク性能が必要なAIアプリには欠かせない選択肢です。

3位: C言語

 Cは極限までリソースが絞られた組み込みAIやファームウェア向けモデル推論に適しています。シンプルな構文と低オーバーヘッドの実行ファイルにより、マイクロコントローラ上でも安定動作。TensorFlow C APIやDarknetが代表的サポート例で、軽量ニューラルネットを直接実装できます。ポインタ管理や手動メモリ制御が必須なため開発効率は下がりますが、「数KB RAMで物体認識」といった極小環境では唯一無二の武器です。

4位: Java

 JVM上で動くJavaは「一度書けばどこでも動く」移植性と堅牢な型安全性が魅力。Deeplearning4jやWekaなどのライブラリがあり、分散学習や大規模データ処理を安定運用できます。ガベージコレクションとマルチスレッド機構により、大規模エンタープライズAIを24/7で回す場面に強み。最新の研究ライブラリはPython系より少ないものの、基盤システムを安定させたい企業向けには有力です。

5位: C#

 .NET エコシステムとVisual Studioの強力なIDE支援を得られるC#は、企業内AIツールの迅速なGUI化とデプロイに好適。ML.NETやTensorFlow.NETが提供する高水準APIでモデル学習から推論まで一貫開発できます。クロスプラットフォーム対応も進み、Windows/Linux/macOSを横断可能。最先端DLフレームワークの量では劣るものの、既存.NET資産を活かすAI拡張には最短ルートです。

6位: TypeScript


JavaScript互換+静的型のTypeScriptは、Webフロントとバックエンドを一気通貫で書ける点が強み。TensorFlow.jsやBrain.jsの型定義を使えば、ブラウザ内学習やリアルタイム推論を安全に実装できます。VS Codeとの相性も抜群で大規模SPAでも型チェックが保守を後押し。深層学習のコア演算には向かないものの、UI×AIを統合したモダンWebアプリでは最適解です。

7位: JavaScript


Webのデファクト言語であるJavaScriptは、クライアントとサーバーを同一言語で統合できる点が魅力。TensorFlow.jsでブラウザ推論、Node.jsでサーバー前処理と、フルスタックAIが実現可能です。非同期IOとイベント駆動設計により、チャットボットやリアルタイム解析のレスポンスも軽快。ただし静的型がない分、巨大プロジェクトでは型安全に注意が必要です。

8位: Go


Goはコンパイル高速・実行軽量・ゴルーチン並行処理という三拍子で、スケールするAIマイクロサービスに好相性。GorgoniaやGoLearnを使えばモデル構築も可能で、バックエンド推論APIを数行で高速化できます。研究最前線のライブラリ量は少なめですが、高スループットAPIやストリーミング推論基盤の実装には有力です。

9位: Ruby

 Rubyの生産性とDSL的柔軟性は、プロトタイピング重視のAI実験環境で重宝します。ruby-dnn や numo-narray など数は限られるものの必要最低限のMLライブラリを備え、Railsと組み合わせた迅速なAI × Web連携も容易。他言語バインディングを駆使すればPython/C++資産も利用可能。実行速度は控えめですが、「まず形にする」フェーズで輝きます。

10位: PHP


Web特化のPHPは、既存LAMPスタックへAI機能を後付けしたいシナリオで強みを発揮。PHP-MLやTensorFlowブリッジを用いれば、Laravel/Symfonyアプリに推論APIを手早く組み込めます。学習フェーズは外部サービスやPythonで行い、推論だけPHPに載せるのが定番。生の計算性能は低めでも、「Web=PHP」環境にAIを溶け込ませる目的なら十分戦力になります。

AI開発における代表的なライブラリ5選

AI開発において、プログラミング言語以外にライブラリも重要になってきます。

ライブラリはそれぞれ独自の機能や強みを持ち、用途や目的に応じて最適なものを選ぶことが求められます。

本項では現在AI分野で広く利用されている代表的なライブラリを5つ厳選し、それぞれの特徴や利点について詳しく解説します。

PyTorch

PyTorchは、Facebook(現Meta)によって開発されたオープンソースの機械学習ライブラリであり、特に深層学習(ディープラーニング)の分野で広く利用されています。その柔軟性と直感的な設計により、研究者や開発者にとって強力なツールとなっています。

 PyTorchの最大の特徴は、動的計算グラフを採用している点です。これにより、モデルのデバッグや変更が容易になり、実験の迅速な反復が可能となります。

また、PyTorchは強力なコミュニティサポートを持ち、多数の拡張ライブラリやツールが提供されています。最新の研究成果を迅速に取り入れることができ、先端的なAIアプリケーションの開発が促進されます。

PyTorchはその使いやすさと高い性能により、学術研究から産業応用まで幅広い領域で採用されており、現代のAI開発において不可欠なライブラリの一つと言えます。

TensorFlow


TensorFlowは、Google Brainが公開したオープンソースの機械学習ライブラリで、研究用途から大規模商用サービスまで幅広く採用されています。柔軟な設計と優れたスケーラビリティにより、GPU/TPUクラスタを跨いだ分散学習や大規模推論を手間なく実現できる点が魅力です。

TensorFlowの核は静的計算グラフにあります。事前にグラフを固定することで最適化パスが豊富に適用でき、推論速度とデプロイ効率を両立。Kerasを標準APIとして抱えるため、複雑なニューラルネットも数行で構築・訓練できます。

さらに、TensorBoard(可視化)、TensorFlow Serving(オンライン推論)、TensorFlow Lite(モバイル・組み込み最適化)など周辺ツールが充実しており、開発から運用までのワークフローをシームレスにカバー。ドキュメントとコミュニティも層が厚く、最新研究の移植や問題解決が迅速に行えます。

総じて、TensorFlowは包括的なエコシステムと高い実運用性能を武器に、現代AI開発の“定番インフラ”として欠かせない存在です。

Transformer


Transformerは、Hugging Faceが提供するNLP(自然言語処理)特化のオープンソースライブラリで、BERT・GPT系をはじめとする事前学習済みモデルをワンコマンドで扱えることから急速に普及しました。

Transformerの強みは圧倒的なモデル多様性と即時性。数千に及ぶ学習済みウェイトをそのまま呼び出せるうえ、PyTorch/TensorFlowの両バックエンドを自動切替でサポート。プロトタイプから本番まで環境を選びません。

詳細チュートリアルと活発なコミュニティにより、新アーキテクチャが公開されるとほぼリアルタイムでライブラリに統合されるのも大きなメリット。ファインチューニングAPIも洗練されており、専門知識がなくても自前データに最適化したモデルを短時間で作成できます。

加えて、音声・画像・マルチモーダル系モジュールも拡充中で、NLPの枠を超えた利用シーンが拡がっています。結果として、Transformerは“最速でSOTAモデルを触る”ためのデファクトスタンダードと言えるでしょう。

JAX

 JAXは、Google製の数値計算ライブラリで、「NumPyそのままの書き味+最先端コンパイラ技術」を掲げ、研究者から高い支持を集めています。

JAXの心臓部は自動微分(auto-grad)とJITコンパイル。Python関数をそのままGPU/TPU向け高速コードに変換し、大規模行列演算を桁違いのスピードで実行します。関数型プログラミングスタイルでコードを記述できるため、可読性・再利用性が高いのも特徴です。

FlaxやHaikuといった高水準フレームワークが周辺を固め、深層学習モデルの構築もスムーズ。複数デバイス並列(pmap)や分散学習(pjit)も標準機能として備え、スケールアウトが容易です。

ドキュメントとサンプルが充実し、コミュニティ主導の拡張も活発。従来NumPyベースのプロジェクトを高速化したい場面から、次世代研究コードの土台まで、JAXは“研究速度を加速するエンジン”として不可欠になりつつあります。

scikit-learn


scikit-learnは、Pythonエコシステムで最も定番の機械学習ライブラリです。線形モデルからツリーベース、クラスタリング、次元削減まで“教科書的”アルゴリズムをワンストップで提供します。

最大の特徴はシンプル&一貫したAPI設計。fit → predict の2ステップを軸にした共通インターフェースと、前処理〜パイプライン〜交差検証がシームレスに繋がる設計により、初心者でも短時間でベースラインを構築可能です。

NumPy/Pandas/Matplotlibとの親和性が高く、既存のデータ処理・可視化フローに自然に溶け込むのも強み。軽量で依存が少ないため、サーバーレス環境やノートブックでも手軽に動かせます。

活発なコミュニティによる頻繁なアップデートで品質は常にブラッシュアップされ、実務・教育・研究のいずれでも広く活用。scikit-learnは「まずはこれで試す」王道ツールとして、AI開発の基盤的存在であり続けています。

まとめ

ひとえに「AI開発に適しているプログラミング言語とは?」と言っても、開発したいものやプロジェクトによって選定基準が変わってくるものです。

また、自社内のリソース環境によっても若干変動のある分野とも言えます。

ぜひAI開発を思い立ったらこの記事を参考にしてみてください。

この記事の著者

児玉慶一(ケーイチ)

児玉慶一

執行役員/ AI・ITエンジニア

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愛称: ケーイチ
1999年2月生まれ。大学へ現役進学後数ヶ月で通信キャリアの営業代理店を経験。営業商材をもとに100名規模の学生団体を構築。個人事業主として2018年〜2020年2月まで活動したのち、2020年4月に広告営業事業を営む株式会社TOYを創業。同時期にITの可能性を感じプログラミングを始め、現在はITエンジニアとして活動中。2021年にLeograph株式会社に参画し、AI研究開発やWebアプリ開発などを手掛ける。 「Don't repeat yourself(重複作業をなくそう)」「Garbage in, Garbage out(無意味なデータは、無意味な結果をもたらす)」をモットーにエンジニア業務をこなす。
【得意領域】
業務効率化AIモデル開発
事業課題、戦略工程からシステム開発
Webマーケティング戦略からSaaS開発