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画像認識AIにPython言語が最適な理由とは?必要な機械学習ライブラリもご紹介

昨今のプログラミング言語は昔と比べて随分と便利になり、多種多様なアプリケーション開発が可能となりました。

しかし、AI開発・画像認識AIの分野においてはプログラミング言語選びによってプロジェクトが円滑に進められるかどうかが変わってきます。

本記事では、Pythonが画像認識AIに最適とされる理由を詳しく解説します。なぜPythonが開発現場での高い採用率を保っているのか、また、機械学習ライブラリについても複数ご紹介したいと思います。

画像認識AIに適した言語3選

冒頭にも触れましたが、画像認識AIの開発において適切なプログラミング言語の選定は成果を左右する重要な要素です。

本記事はPythonの適性について解説するものですが、一概に「Pythonだけがいい」というわけではないので、本節では性能面・開発効率・ライブラリの充実度などを基準に、特に適していると評価される3つの言語について詳しく解説します。

Python

Pythonは、そのシンプルで読みやすい文法により、開発者にとって非常に扱いやすい言語です。AI開発以外の現場でも広く採用されている言語となります。

画像認識AI開発においては、TensorFlowやPyTorch、OpenCVなど、強力な機械学習および画像処理ライブラリが豊富に揃っており、画像認識AIの開発を効率的にサポートします。

また、広範なコミュニティによる活発な情報共有と豊富なドキュメントが利用可能であるため、問題解決や機能拡張が容易に行えます。これらの要素が、Pythonを画像認識AI開発に最適な選択肢として際立たせています。

C++ / CUDA

C++およびCUDAは、画像認識AIの開発において高いパフォーマンスを必要とする場面で有効です。ここで言う「高いパフォーマンス」とは速い推論処理(計算処理)のことを指します。

C++は高速な実行速度と効率的なメモリ管理により、リアルタイム処理や大規模データの扱いに適しています。CUDAはNVIDIA製GPUを活用することで並列処理能力を大幅に向上させ、複雑なアルゴリズムの実行を加速します。

AI開発における計算処理の効率化は絶対正義であるため、C++の高速な実行速度は非常に強力なスペックとなります。

TypeScript

TypeScriptは、JavaScriptに型安全性を付加した言語です。一見「JavaScriptをより使いやすくしたもの」「フロントエンドで活躍する言語」だと思ってしまいがちですが、実はそうではありません。

TypeScriptには、画像認識AI開発に役立つ豊ライブラリやフレームワーク(例:TensorFlow.js)が存在しており、“ブラウザ上”でのリアルタイム画像処理などを行うことができます。

また、保守性の高さにおいてもTypeScriptの型システムは役立ちます。開発時のエラーを早期に検出でき、安定したAIアプリケーションの開発を支援します。

画像認識AIにPythonが最適な理由

さて、ここまでプログラミング言語をご紹介しましたが、やはり画像認識AIの開発においてPythonは他の言語と比較して多くの優位性を持つため最適な選択と言えるでしょう。

その理由を挙げようと思えばキリがないくらいですが、ここでは代表的な理由を3つご紹介します。

機械学習ライブラリの豊富さ

まず、Pythonが画像認識AI開発に適している理由の一つに、そのライブラリの多さがあります。

機械学習ライブラリに関しては他の言語と比べて圧倒的。深層学習フレームワークのTensorFlowやPyTorch、データ処理に優れたPandas、数値計算を効率化するNumPyなどが有名です。

もともとPythonの人気に火がついたのもこのライブラリの多さや機械学習との相性の良さだったりします。昨今のAIブームが時流に乗るにつれ、この言語の採用頻度も増えていったと言うわけです。

データ解析から学習まで一気通貫

AI開発は大きく分けて二つのフェーズがあります。「データの収集・整形」と「モデルの学習」です。

Pythonはデータ解析からモデルの学習まで一貫して行える統合的な環境を提供してくれるので、端的に開発スピードが段違いです。

先ほども触れたようなライブラリを例に挙げると、PandasやNumPyを用いた効率的なデータ処理を行え、大規模なデータセットの前処理が容易になります。

同一言語内でTensorFlowやPyTorchを利用して機械学習モデルの設計・訓練が可能となるため開発プロセスがスムーズに進行し、迅速なモデル開発と反復的な改善が実現するという点が画像認識AI開発に適している最大の理由でしょう。

開発現場での採用数の多さ

これまで挙げた特徴も相まって、Pythonは画像認識AIの開発現場で広く採用されています。求人サイトの応募要項に「Pythonでの画像認識AI開発経験」が必須となっている場面を非常に多く見かけます。

そもそも、AI開発以外でも人気の高いPythonをスキルセットに加えている企業も少なくはありません。

その上で機械学習のフレームワークが全世界で多く存在するため、Pythonを画像認識AIの開発現場で多く見かけるのは不思議なことではありませんよね。

画像認識AIに使える機械学習ライブラリ5選

さて、ここまでPythonの画像認識AI開発における魅力的なポイントをご紹介してきましたが、その中でも具体的にご紹介したい点といえば「機械学習ライブラリ」についてです。

本節では画像認識AIに使える機械学習ライブラリを5つご紹介しますので、今後の参考になれば幸いです。

OpenCV

OpenCV(Open Source Computer Vision Library)は、画像処理およびコンピュータビジョンの分野で広く利用されている強力なライブラリです。

Pythonとの高い互換性を持ち、豊富な機能セットを提供することで、画像の前処理、特徴抽出、物体検出など多岐にわたる画像認識タスクを効率的に実装することが可能です。

リアルタイム処理に対応しており、他の機械学習ライブラリとの統合も容易であるため、柔軟な開発環境を構築することができます。

OpenCVは、2006年に1.0がリリースされ、2009年にメジャーバージョンが実施され2.0がリリースされました。その後、しばらく2.4.x系のリリースが続いた後、ついに2015年6月にメジャーバージョンが実施され、3.0がリリースされました。

PyTorch

PyTorch(パイトーチ)は、Meta(旧Facebook)が開発したオープンソースの機械学習ライブラリであり、特にディープラーニング分野において高い柔軟性と効率性を提供しています。

動的計算グラフを採用しているため、モデルの構築や調整が直感的かつ容易に行える点が特徴です。

2023年3月には、後方互換性を保ちながら処理速度が大幅に向上した「PyTorch 2.0」が正式リリースされました。このバージョンでは、パフォーマンスの改善が図られ、より効率的な開発が可能となっています。 2024年10月には「PyTorch 2.5」がリリースされ、SDPA向けの新しいCuDNNバックエンドの搭載や、torch.compileのリージョンコンパイルによるコールドスタートアップ時間の短縮など、さらなる機能強化が行われました。

Tensorflow

TensorFlowは、Googleが開発したオープンソースの機械学習ライブラリであり、特にディープラーニングの分野で広く利用されています。

静的計算グラフを採用しており、大規模なデータセットや複雑なモデルの効率的な処理が可能です。

2023年7月には、TensorFlow 2.13がリリースされ、Apple Siliconへの対応や、TensorFlow Liteにおけるパーティショニングフェーズ中にデリゲートクラスタリングをオフにするオプションの追加、add演算における最大6次元のブロードキャストのサポートなど、いくつかの演算子の改善が行われました。

また、TensorFlow Liteを用いることで、モバイルデバイスや組み込みシステムへのモデル展開も容易となり、幅広いアプリケーション開発が可能です。例えば、メルカリではTensorFlow Liteを活用して、AndroidおよびiOSの両プラットフォームで画像分類モデルを組み込み、バーコード出品のサジェスト機能を実現しています。

Scikit-Image

Scikit-Imageは、Pythonベースのオープンソース画像処理ライブラリであり、科学技術計算向けの強力なツールとして広く利用されています。

NumPyやSciPyと密接に連携して動作するため、データ解析や機械学習プロジェクトにおいてシームレスな統合が可能です。

主な特徴として、Scikit-Imageは高度な画像処理アルゴリズムを多数提供しており、画像の前処理、フィルタリング、エッジ検出、セグメンテーション、特徴抽出など、多岐にわたる操作を容易に実行できます。これにより、研究者や開発者は複雑な画像処理タスクを効率的に実装することができます。

2025年2月にリリースされたバージョン0.25.2では、`skimage.feature`モジュールに新たに`SIFT`(Scale-Invariant Feature Transform)特徴検出器と記述子抽出器が追加されました。これにより、スケール不変な特徴点の検出と記述が可能となり、画像マッチングや物体認識などのタスクにおいて精度の向上が期待できます。

SciPy

SciPyはオープンソースの科学技術計算ライブラリであり、幅広い数値計算機能を提供しています。

特に画像認識AIにおいては、信号処理、最適化、統計解析などの高度な数学的手法を活用する際に不可欠なツールとなっています。NumPyと密接に連携して動作するため、大規模なデータセットの効率的な操作や計算が可能です。

主な特徴として、SciPyは多様なモジュールを備えており、画像のフィルタリングやノイズ除去、エッジ検出といった前処理から、機械学習モデルの最適化や評価まで、一貫したワークフローをサポートします。

特に`scipy.ndimage`モジュールは、画像の多次元処理において高い柔軟性と性能を発揮し、複雑な画像操作を容易に実現します。

2025年1月25日には、東京で「SciPyDataJapan 2025」が初開催され、科学技術計算とデータサイエンスの最新トピックが共有されました。このカンファレンスでは、Pythonによる科学技術とデータサイエンスの融合に関するセッションが同時開催され、参加者は両分野の最新情報を体験できる機会となりました。 加えて、SciPyは豊富なドキュメントとサンプルコードを提供しており、初心者から専門家まで幅広いユーザーが効率的に利用できる環境が整っています。これにより、画像認識AIの開発において、信頼性と拡張性の高い基盤を構築することが可能となります。

まとめ

Pythonは豊富な機械学習ライブラリと統合的な開発環境を提供し、画像認識AIに最適な言語です。

本記事では、その理由と主要ライブラリを紹介しました。Pythonを活用することで、効率的かつ高性能な画像認識システムの構築が可能となります。

この記事の著者

児玉慶一(ケーイチ)

児玉慶一

執行役員/ AI・ITエンジニア

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愛称: ケーイチ
1999年2月生まれ。大学へ現役進学後数ヶ月で通信キャリアの営業代理店を経験。営業商材をもとに100名規模の学生団体を構築。個人事業主として2018年〜2020年2月まで活動したのち、2020年4月に広告営業事業を営む株式会社TOYを創業。同時期にITの可能性を感じプログラミングを始め、現在はITエンジニアとして活動中。2021年にLeograph株式会社に参画し、AI研究開発やWebアプリ開発などを手掛ける。 「Don't repeat yourself(重複作業をなくそう)」「Garbage in, Garbage out(無意味なデータは、無意味な結果をもたらす)」をモットーにエンジニア業務をこなす。
【得意領域】
業務効率化AIモデル開発
事業課題、戦略工程からシステム開発
Webマーケティング戦略からSaaS開発