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自然言語処理(NLP)とは?機械学習・AIとの違いをAIエンジニアが解説!

世の中のIT技術の発展に伴い、日常業務や生活からストレスが取り除かれていく実感がある人も増えた一方、新たな技術に追いつくのに精一杯な方もいらっしゃるかもしれません。もしかしたら、本記事に辿り着いたあなたもそういった技術について知りたい!と感じている一人でしょうか?

そんな技術の中でも一際目立つキーワードとして「自然言語処理」というものがあります。

AI技術者の間でしか取り沙汰されなかった言葉ですが、昨今のAIブームにより一般の間でも使われる言葉となりました。しかし、その意味や機械学習・AIなどとの違いがよくわからないという方もいらっしゃるでしょう。

そこで本記事では、自然言語処理(NLP)の基本概念や主要技術を詳しく解説します。また、機械学習やAIとの違いについてAIエンジニアの視点から明らかにし、実際にNLPが活用されているサービス例を紹介して皆様の理解を深めるきっかけとしていただければ幸いです。

自然言語処理とは?

自然言語処理(NLP)は、端的に人間が使用する自然言語をコンピュータが理解・解析・生成する技術です。テキストや音声データから有用な情報を抽出し、様々な応用が可能となります。

この技術の応用により私たちの暮らしは非常に便利なものとなりましたが、その基本的な意味などについては正確に語られることは多くありません。

本節では、自然言語処理の定義や基礎的な技術について詳しく解説します。

自然言語処理の定義

自然言語処理(NLP)は、人間が日常的に使用する自然言語をコンピュータが理解・解析し、適切に応答や生成を行うための技術分野のことを指します。文法構造の解析、意味の理解、文脈の把握、曖昧性の解消などが含まれます。

NLPは多岐にわたる応用が可能であり、人工知能(AI)の進化を速める一翼を担っています。

また、世の中に溢れる大量のデータを効率的に処理するために自然言語処理技術が多く活用され、継続的な改善(または市場競争)が進められています。これにより、より精度の高い言語処理が実現され、様々な産業分野での利用が拡大しています。

近年ではTransformerモデルの技術進化が代表的な例でしょう。Transformerは従来の手法と比べて大幅に性能が向上し、ビジネスや研究の現場での応用がますます広がっています。

自然言語処理の技術

その定義は「技術を指すもの」ですが、自然言語処理には多岐にわたる先進的な技術が存在します。

具体的な技術応用例(わかりやすいもの)には以下のようなものがあります。

テキスト分類

テキスト分類は、文章や文書をあらかじめ定義されたカテゴリに自動的に仕分ける技術です。

例えばスパムメールの検出、商品レビューの分類、ニュース記事のジャンル分けなど。「この文章は〇〇という種類に当たる成分がある」と仕分けることが可能になる技術です。

感情分析

感情分析(ネガポジ分析)は、テキストデータからユーザーの感情や意見を自動的に抽出・分類する技術です。主に企業のマーケティング活動において使われることが多い技術となっています。

SNSなどで一般に語られる口コミ、その印象が悪い場合は企業にとってサービス改善のチャンスとなるかもしれませんし、逆に口コミがいいものであれば「もっとこういう人に届ける努力をしよう」と顧客分析がより生産的になります。

音声認識

音声認識は、音声データをテキストに変換する技術です。音声コマンドの実行や自動文字起こし、リアルタイム翻訳などがこの技術例に当たります。

わかりやすい例で言うと、スマホの音声入力技術は数年前から基本搭載技術として有名ですよね。今やこの技術も広い意味で大きく進化していて、最近では音声AIエージェントという形で私たちの暮らしに浸透していくことが予想されています。

自然言語処理の応用例

また、上記で語った自然言語処理技術の具体的な使用例としては以下のようなものが挙げられます。

文章要約

自然言語処理技術を使えば、膨大なテキストデータから主要な情報を抽出し、簡潔にまとめることが可能になります。

形態素解析という方法で文字列を品詞単位で分離させることで固有名詞の抽出が可能になったり、その文章における重要な文字列を重み付けするTF-IDF分析などがあります。

ニュース記事の冒頭で「この記事は〇〇についての記事です」とサマリーオーバービューがあるのを見かけたことはありませんか?これはまさに自然言語処理の文章要約への応用です。

CRMツール(顧客関係管理)

CRMツールは、企業が顧客との関係を効果的に構築・維持するためのシステムです。Sales Force(セールスフォース)やHubSpot(ハブスポット)などが代表例です。

一般的にCRMツールは顧客との文章でのやり取り、メール送信履歴などをデータとして保存しておくことができます。これに自然言語処理技術を活用することで、顧客からの問い合わせやフィードバックを自動的に分析し、ニーズや傾向を把握することが可能になります。

マーケティング戦略の策定が非常に効率的となるため、自然言語処理技術とCRMツールの相性は抜群です。

音声アシスタント

自然言語処理技術は音声認識においても活用されていると前述しましたが、これは音声アシスタントのサービスにおいて光るものがあります。

例えば、iPhoneに搭載のSiriに「30分後に起こして」と問いかけると自動でアラームを設定してくれます。これは「30分後に起こして」という文章を「“30” + “分” + “後に” + “起こして”」と分解し、それぞれの文字列に対応するアクションをiPhone内のシステムで策定しています。

このような音声アシスタントのフロント技術はまさに自然言語処理技術です。

自然言語処理と機械学習・AIとの違い

自然言語処理・機械学習・AIの違いをわかりやすく説明している図 - Leograph株式会社

自然言語処理は、機械学習や人工知能と密接に関連していますが、それぞれ異なる役割と目的を持っています。

AI技術者にとっては既知の概念であるため難しくありませんが、一般的にはそれぞれの分野について混同してしまったり、そもそもの意味の違いを理解するのに時間がかかってしまいますよね。

本節では、自然言語処理と機械学習、および人工知能との関係性を明確にしていきたいかと思います。

自然言語処理と機械学習の関係

自然言語処理(NLP)はここまで解説してきた通り「技術そのものを指す言葉」であると解説してきました。では機械学習(ML)はどうでしょうか?

機械学習とは、いわゆるアルゴリズムを用いた数学的・統計学的・確率論的な分析に基づく計算モデルを学習(開発)させる工程、分野の総称のことを言います。

主な学習手法としては以下のようなものがあります。

  • 教師あり学習
    • 入力と正解のペアを使い予測や分類を学習する。
    • 例: 画像認識や傾向予測
  • 教師なし学習
    • ラベルなしデータを使い、データの構造やパターンを発見する。
    • 例: クラスタリング、次元削減
  • 強化学習
    • モデルが報酬を最大化する行動を試行錯誤で学習。
    • 例: ゲームAI、ロボット制御
  • 深層強化学習
    • 強化学習に深層学習を組み合わせ、より複雑な環境で高性能な学習を実現。
    • 例: 自動運転など

これらの機械学習には計算モデルが正確かつ精巧な学習をすることが目指されるために、いずれも大量なデータ、整形された綺麗なデータが必要となります。

この際に使われるのが自然言語処理技術です。先ほど解説の文章の要約や品詞の抽出などにより、モデルが学習するべきデータを都合よく集めることができます。

また、自然言語処理そのものが機械学習を施された計算モデルを扱って行われる例(後述します)も多々あり、ここが皆さんを混乱させている原因かもしれません。

自然言語処理とAIとの関係

機械学習との違いの次に聞かれるものとして、「自然言語処理とAIの違いとは?」というのがあります。こちらも少し理解するのに時間がかかる複雑さがあるように思えます。

そもそもAIとは何か単体の技術やモノを指す言葉ではなく、機械学習や自然言語処理などの「人工知能の達成や規範を表す概念」であることに留意が必要です。「〇〇AI」といった名称で呼ばれるサービスなどがありますが、あくまで名称として浸透した呼び名であって、AIという言葉を意味づけるものではありません。

ざっくりとした言い方では、自然言語処理(NLP)は、人工知能(AI)の主要な分野の一つとして位置づけられます。AIの目標である人間の知的活動のサポートを実現するために、NLPは言語の理解と生成に特化した技術として扱われます。

結論: 自然言語処理は技術手法の名称

結論として、自然言語処理(NLP)は人工知能の一技術手法として位置付けられ、機械学習との相互干渉、そしてAIという概念図を以下に表すことができるかと思います。

AI(人工知能)
├── 機械学習(Machine Learning)
│   ├── 教師あり学習
│   ├── 教師なし学習
│   ├── 強化学習
│   └── 自然言語処理(NLP)
│       ├── テキスト分類
│       ├── 機械翻訳
│       ├── 音声認識
│       ├── テキスト生成
│       └── 感情分析
├── ルールベースシステム
├── 専門家システム
└── その他のAI技術

自然言語処理が使われているサービス例

ここまで自然言語処理(NLP)の概要やその技術応用例などを用いて解説してきましたが、実際にイメージのつくサービス例をいくつかご紹介したいかと思います。

自然言語処理(NLP)は、日常的に利用される多くのサービスに組み込まれていますので、本節は前述と合わせて理解を深めるものにできればと思います。

Google検索

Google検索では、自然言語処理(NLP)技術が幅広く活用されています。ユーザーが入力する検索クエリの意味や意図を正確に解析し、関連性の高い検索結果を提供するために、NLPが重要な役割を果たしています。

Googleは2018年にBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)という自然言語処理を活用したAIモデルを導入しました。BERTは、文章の前後関係を双方向から理解することで、検索クエリの文脈をより深く把握し、ユーザーの意図に沿った検索結果を提供する能力を向上させることに成功しました。

このBERTの技術はオープンソースとして公開されており、一般でも扱うことができます。

Amazon Alexa

Alexaは自然言語処理(NLP)技術を駆使した音声アシスタントです。ユーザーの音声コマンドを正確に認識・解析し、その意図を理解することで、音楽の再生、スマートホームデバイスの操作、情報の提供など多様なサービスを実現しています。

高度なディープラーニングアルゴリズムを用いた音声認識技術により、高精度なレスポンスが可能となっています。

また、継続的な機械学習を通じてユーザーの嗜好や利用パターンを学習し、パーソナライズされたサービス提供を行うことでユーザー満足度向上に貢献しています。

ChatGPT

ChatGPTはOpenAIが開発した生成AIモデルです。

リリースからわずか数ヶ月でユーザー数が1億人を超え、急速に普及したことから生成AI時代の立役者と言っても過言ではないかもしれません。今では知らない人の方が少なく、日常的なリサーチや業務に活用している人も多いのではないでしょうか?

最近ではインターネット上の最新情報を直接検索し信頼できるソースからの情報をもとにより的確で最新の知識に基づいたインサイトを得る機能が標準搭載されたりと、自然言語処理の枠を超えたAIの代表格となっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか?本記事では自然言語処理の定義や技術、機械学習・AIとの相違点を包括的に解説しました。

少し理解するのに時間がかかりがちな分野ではありますが、この記事を通して自然言語処理についての理解が進められたら幸いです。

この記事の著者

児玉慶一(ケーイチ)

児玉慶一

執行役員/ AI・ITエンジニア

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愛称: ケーイチ
1999年2月生まれ。大学へ現役進学後数ヶ月で通信キャリアの営業代理店を経験。営業商材をもとに100名規模の学生団体を構築。個人事業主として2018年〜2020年2月まで活動したのち、2020年4月に広告営業事業を営む株式会社TOYを創業。同時期にITの可能性を感じプログラミングを始め、現在はITエンジニアとして活動中。2021年にLeograph株式会社に参画し、AI研究開発やWebアプリ開発などを手掛ける。 「Don't repeat yourself(重複作業をなくそう)」「Garbage in, Garbage out(無意味なデータは、無意味な結果をもたらす)」をモットーにエンジニア業務をこなす。
【得意領域】
業務効率化AIモデル開発
事業課題、戦略工程からシステム開発
Webマーケティング戦略からSaaS開発