アパレル業界でAI活用をする方法を解説!需要予測やデザインについて
近年さまざまな業界でAI活用が推し進められる中、特にアパレル業界は急速に進化する市場環境の中で、競争力を維持・向上させるためにAIの活用がますます重要となってきています。
そこには必ずしもポジティブな理由だけでなく、抗えぬ時流の問題が重なっていることもしばしば。
AI活用に迫られて急遽情報を仕入れたいという担当者も中にはいらっしゃるでしょう。
そこで、本記事では、需要予測やデザイン生成における具体的なAI活用方法を詳しく解説し、業界が直面する人材不足や消費者行動の変化にどのように対応できるかを探ります。
アパレル業界にAI活用が必要な理由

アパレル業界では、急激な市場変化と消費者の多様化するニーズに対応するために、高度な分析能力と効率的な運営が求められています。
しかし、人材不足や従来の手法では対応しきれない課題が存在します。大きく分けて二つの理由があると言われているので、本節ではその理由について解説していきたいかと思います。
業界の人材不足
特定業界に限った話ではないのですが、やはりこの問題は避けて通れないでしょう。「人材不足」です。
アパレル業界では、専門的なスキルを持つ人材の確保がますます困難となっています。
特に、デジタル技術やAIの知識を持つ人材は需要が高まる一方で、供給が追いついていません。この人材不足は、業務の効率化やイノベーション推進に支障をきたし、競争力の低下を招く恐れがあります。
また、高齢化や若年層の業界離れも一因となっており、持続可能な成長のためには新たな人材戦略が求められています。
AIの導入は、こういった人手不足を補完し業務の自動化や高度なデータ分析を可能にすることで、“これまで人間が生み出してきた富の総量”を維持または増加させることが期待されています。
消費者の行動変容
近年、消費者の行動は大きく変化しており、特にアパレル業界においてその影響は顕著です。
インターネットやスマートフォンの普及により、オンラインショッピングが主流となり、消費者は24時間いつでも購入できる環境を求めています。SNSに関してはその影響力が増して、トレンドの拡散速度が速くなったことで、企業は迅速な対応が求められるようになりました。
また、個々の嗜好に合わせたパーソナライズされた商品やサービスへの需要が高まっており、消費者は自分だけのスタイルを追求する傾向が強まっています。
ここに追い打ちをかけるかのように、環境への配慮やサステナビリティを重視する消費者が増加しており、エシカルファッションへの関心も高まっています。
これらの行動変容に対応するため、アパレル企業はAI技術を活用して消費者データを分析し、需要予測や商品開発、マーケティング戦略の最適化を図る必要があります。
EC(通信販売)でもこの流れは顕著です。オンラインでの手軽な購入が可能になることで、消費者はブランドや商品を簡単に探し、選ぶことができるようになっています。結果として企業は強い圧力を受けて、新たなビジネスモデルの構築を迫られています。
アパレル業界でAI活用をする方法
アパレル業界におけるAI活用は、需要予測、デザイン生成、顧客対応など多岐にわたります。
前述のような業務負担を下げることや効率化によって人材不足問題を解決したり、マーケティングのための分析をデータドリブンで徹底するためのAIを導入したりとさまざまです。
本節ではその具体的なAI活用方法について詳しく解説します。
需要予測AIの導入
需要予測AIとは、過去の販売データや市場動向、消費者の購買履歴など多様なデータを収集・統合することで、将来の顧客ニーズを数値的に予測することができる計算モデル(およびサービス)のことを指します。
需要予測が効率化されることによるメリットは大きく分けて二つあります:
- マーケティングリソース最適化
- 在庫管理最適化
端的に、顧客満足度の向上とコスト削減につながるため、経営判断がしやすくなるという結果になります。
これらは元々人間が行う仕事でしたが、一部をAIが業務負担をすることで現場レベルでも従業員のエンゲージメントが高まるとも言われています。
デザイン生成AIの導入
デザイン生成AIの導入においては少しコントロバーシャルな側面がありますが、これもやはり時代の流れには逆らえない部分があります。
昨今、画像生成AIを筆頭に「人間にしか行えないとされてきたクリエイティブ業務」を大体しうる生成AIが登場してきました。
アパレル業界では、ニーズに沿った成果物を作れるデザイナーリソースというのは限りがあり、その一部分を生成AIが担うという業態が少しずつ出てきています。
しかし、完全に人間の仕事が代替されるというのではなく、あくまでもアイディエーション(アイデアの創出段階)のサポート役として使われることがほとんどのようです。
AIチャットボットの導入
AIチャットボットの導入においては、アパレル小売店などがカスタマーセンターと連携する際のコストを削減してくれるというメリットがあります。
さらに、チャットボットは顧客の購買履歴や行動データを分析し、パーソナライズされた商品提案やマーケティング施策を展開することが可能です。多言語対応も可能であり、グローバル市場における顧客対応力を強化することも可能です。
導入に際しては、自然言語処理技術の精度向上やユーザーインターフェースの最適化を図り、スムーズな対話体験を提供することが重要です。
アパレル業界の需要予測とは

ここまでで一つ気になるワードが出てきました。
「需要予測」です。
アパレル業界の需要予測とは、市場動向や消費者の購買データを分析し、適切な在庫管理や生産計画を策定するプロセスです。正確な需要予測により、在庫の無駄を減らし、販売機会を最大化します。
AIの活用は、これらの予測精度を向上させ、業界の競争力強化に寄与します。
以下では、需要予測を実現する具体的な方法について解説します。
顧客データ基盤の作成
顧客データ基盤の作成においては、まず多様なデータソースから取得した顧客情報を統合・整理することが不可欠です。購買履歴、ウェブサイトの閲覧履歴、ソーシャルメディアの活動データなどを一元管理し、顧客の行動パターンや嗜好を詳細に分析します。
そのためにはWebサイトの構成から考えておく必要があります。単純なECサイトではなく、しっかりと顧客データを参照できるようなデータテーブル設計、システム設計がなされていることが前提です。
昨今ではShopifyなどのEC構築プラットフォームがあり、顧客分析にAIを導入するハードルが低くなりました。
カスタマーリレーションの構築
いわゆるCRMツールをイメージしていただくとわかりやすいですが、顧客情報を単純に管理できるのみにとどまらず、ニーズや顧客フェーズに応じて適切に顧客へ情報を投げかけることが重要です。
そのために、各種顧客とのコミュニケーションが取れるツールを導入しておくことが肝要となってきます。
予測AIの構築
ここまでの顧客データ基盤の用意〜カスタマーリレーションの構築が済んでいると、以下のAIを構築する要件が揃います。
- 有効なデータ数
- エンジニアリング可能なデータ構成
予測AIの構築において、まずは大量かつ多様なデータの収集と整備が不可欠です。次に、機械学習アルゴリズムを活用し、過去のデータから需要パターンを学習させます。この時点でデータがAIモデルが学習しやすいようにエンジニアリングしてあげることが重要です。
そして、「とあるデータのパターンにおいては〇〇の需要が高い」といった“答えに近い予測”が可能となり、いわゆる需要予測AIを構築することが可能になります。
まとめ
アパレル業界におけるAI活用は、業界の人材不足や消費者の行動変容に効果的に対応するために必要不可欠です。
今後もAI技術の進化に伴い、アパレル業界の持続的な成長を支える重要な要素となるでしょう。
この記事の著者

児玉慶一
執行役員/ AI・ITエンジニア
愛称: ケーイチ
1999年2月生まれ。大学へ現役進学後数ヶ月で通信キャリアの営業代理店を経験。営業商材をもとに100名規模の学生団体を構築。個人事業主として2018年〜2020年2月まで活動したのち、2020年4月に広告営業事業を営む株式会社TOYを創業。同時期にITの可能性を感じプログラミングを始め、現在はITエンジニアとして活動中。2021年にLeograph株式会社に参画し、AI研究開発やWebアプリ開発などを手掛ける。 「Don't repeat yourself(重複作業をなくそう)」「Garbage in, Garbage out(無意味なデータは、無意味な結果をもたらす)」をモットーにエンジニア業務をこなす。
【得意領域】
業務効率化AIモデル開発
事業課題、戦略工程からシステム開発
Webマーケティング戦略からSaaS開発